講演「阿波の十郎兵衛は海賊だったのか」

実施日および概要

(1) 日 時 :令和4年7月7日 (木)

(2) 場 所 :徳島県立総合福祉センター視聴覚室

(3) 講 師 :とくしま学博士 郡 利明さん

講演内容

 人形浄瑠璃で有名な、十郎兵衛は実在した庄屋であるが、彼は罪名もなく処刑された。彼には義人説と海賊説がある。

1.海賊説

十郎兵衛の海賊説に近いのが、鳥居龍蔵氏の感想文である。

海賊・用右衛門が曾一兵衛の舟を襲い殺害した。この曾一兵衛の舟に金があることを教えたのが十郎兵衛である。という疑惑。これは、「板東喜右衛門婆々の聞書」に記述していると述べている。

この聞書は彼の死後余り遠からざる同地板東家の老女の見聞談であるから最も信を置くに足る。また、十郎兵衛と用右衛門は親戚筋で極めて親しい関係にあり、用右衛門と共に関係した事件の刑死としている。

2.義人説

 これに対し真っ向から反対しているのが川内村青年団による「義人・十郎兵衛」である。鳥居龍蔵氏の海賊説のファクターである「板東喜右衛門婆々の聞書」について、この聞書ができたのは百四十年も経った天保の初めで十郎兵衛処刑後はるか歳月を経たるものであり、噂伝の混入した恐れが十二分にある証拠にならない。これは当局の落ち度であると述べている。

3.結論

 義人説、海賊説ともに決定的な証拠はない。これまで多くの民族学者が永年に亘り調査したが結論は出ていない。

人形浄瑠璃は、徳島県の文化遺産として江戸時代から続く芸能文化である、今日も「おつる」の可憐な声は人々の心に迫る演技を続けている。

十郎兵衛に多少の疑惑があったとしても、私は義人説を支持したい。